学校を出ようとしたら土砂降りだった。

「・・・・・・・・・最っ悪だ」

今日はバンドの練習の後に深夜までバイトを入れている。
スタジオ代がもったいないから遅刻はできないし、そうなると濡れるのを覚悟で家に帰り着替えて出直すなど論外だ。
それにうっかり風邪でも引いたら練習はできなくなるし薬代はかかるし、何よりバイトを欠勤したら収入が減る。

これは困る。

本気で困る。

瞬のアルバイトは普通の高校生と違って死活問題だ。

「バイクは―――・・・・・・コケたらまずいか」

激しい雨で視界が悪いからバイクは置いて帰らなければいけない。そのせいで移動時間はさらに長くなる。
損か得かの算盤を頭の中で忙しなく弾いている時、ふと背後に人の気配を感じた。

「ぼーっとして、どうしたの?」

「いや雨が・・・―――なっ、なんでもない!」

振っていて、と続けようとしたものの、聞き覚えのある声に相手が誰であるかを思い出してハッとして口をつぐんだ。
けれどそれはもう遅かったようで、

「うわ、すごい雨ね。瞬君今日バイトあるんでしょう?時間、大丈夫なの?」

当たり前のように自分の行動を言い当てられたことがひどく嬉しいような気恥ずかしいようなそんな、なんとも
ムズムズした気持ちになって、咄嗟に言い返すことができなくて拗ねた子どものように顔を逸らした。

「あ―――――アンタには・・・関係ない」

どうにかぼそりと言えば、今度は先生の方が子どもみたいに頬を膨らませた。

「関係なくなんかありませんー。瞬君がなんと言おうと私はあなたの担任なんですからね。ほら!」

ズイッと差し出されたのは1本の傘で。おそらく自分のものなんだろう、白地に綺麗なブルーの模様が浮いている。

「傘ないんでしょ?わたしので悪いけど」

「いらない。アンタのだろう、これ。俺に貸しちまって自分はどうするんだよ?」

「心配しなくても大丈夫よ。もう1本置き傘があるから。ほら、そんなことより急がなくていいの?」

たまたま勘が当たってもう1本持ってきているから、とそういう先生の言葉に背中を押されて しぶしぶ傘を受け取ると、この数ヶ月で見慣れた顔がにっこり笑った。

「それじゃ気をつけてね。バイトも練習も頑張るのはいいけど、ムリはしないように」

「・・・悪い。助かった」

「いいからいいから、その代わり明日は補習、気合い入れて受けてもらうわよ?」

ニヤリと意地の悪そうな顔に少しだけ苦笑して、渡された傘をポンと開き瞬は学校を後にした。

 

 

そんな後姿を満足げな笑みで見送りながら悠里は思う。

今まで一度だって天気予想は当たった試しのない自分が、今日に限って傘を持ってくるはずもない。

極めつけに洗濯だって干してきてしまった―――――最っ悪だ。

 

「あーあ、どうやって帰ろうかしら」

 

けれどそれでも。

洗濯物が乾かなくても、雨宿りをして帰るのが遅くなっても。

 

あのお気に入りの傘が大事な彼の役に立つなら、今日は悪くない・・・気がした。

 

 

 

 

 

 

 本日は夕方から雨、ところにより晴れ間が出るでしょう。          

 

 

 

 

 

 

とりあえずここの右上にある長ったらしいのがタイトルです。
話よりタイトルの方が長い気がする・・・。
とりあえず瞬なら傘を貸さずに借りる側だろうとなんとなく思ってこんな話に。

彼がこの状況で貸してくれたら、それはもう愛だと思います(笑)