朝、たまたま耳に入ったお天気キャスターの本日のお言葉。

『なお今日は夕方から夜にかけて激しいにわか雨の降る恐れがあります。傘を持って出かけられるのをお忘れなく』

 

   □■ Present for you. ■□

 

補習を終えてなんとなく疲れを感じた悠里は、今日は早々に帰ることを決めていつもより少しだけ早く職員室を後にした。
―――――けれど、そんなときに限って雨が降る。

「・・・昼間あんなに晴れてたのに・・・」

最近出がけにテレビをつけていても、時間に追われてニュースをまともに聞いている暇がないせいか、こんなふうに当ての外れることがよくある。
今日だって朝起きたときに良く晴れていたからと洗濯物を干してきたのだが、それも裏目に出てしまった。 土砂降りではないし、駅までだって
走って行けない距離ではない。濡れてしまうことは確定だけれど、帰ってすぐにシャワーで温まってそのまま眠ってしまえたら気持ちよさそうだ。

そうしようかと校舎のエントランスから一歩を踏み出そうとした時、悠里の背後で不意にバン!と大きな音がした。

「きゃあっ!!」

「キシシシシ!ビビッてやんのぉ〜」

振り返れば目の前には大きく開いた真っ赤な傘。
さっきのはこれが勢いよく開いた音だったのかと胸を撫で下ろしつつ、悠里は口を尖らせる。

「清春君!傘は人に向けるんじゃありません。危ないでしょう?」

「へいへいほーい。つーかナニやってんの?帰るんじゃーないのカヨ?」

「帰るわよ?そりゃあ帰りたいんだけど、傘がなくて・・・。もう走って行っちゃおうかなーなんて考えてたとこだったの」

「・・・フーン」

そんなことかとでも言いたげな気のない返事に、これじゃあその傘に入れてってくれるとか言うわけはないわよね、と少しだけがっかりした。
けれど、次に悠里が耳にした言葉は彼女の予想とはちがうもので。

「んーじゃあ、オレ様が傘を恵んでやるゼ。ホレ!」

「・・・・・・へっ!?」

ポイと放って寄越されたのは、なんの変哲もない紫色のビニール傘。

「ありがたく使わせていただきな!!」

「えっ、あっ、ま――――清春君!?ちょっとこれ・・・!!」

言うだけ言って一人サラサラと雨の降る中へ駆け出していった小柄な背中は、あっという間に小さくなって宵闇に紛れて消えてしまった。
わけもわからず残されたのは悠里の手の中の紫色のビニール傘一本と、彼女だけ。

なんだったのかしら、と首をかしげながらも寄越されたビニール傘は実に魅力的だった。

せっかくだし貸してもらおうと決めて、ちょっとだけ軽い足取りで一歩を踏み出しポンと傘を開いて、彼女は見た。

紫色のビニール傘と思っていたのは、ご丁寧にも油性マジックで着色されたもので、しかも骨に張られたビニールの一部に
着色されずに残された『マヌケ!!』の文字。

「・・・・・・・・・きーよーはーるーくーんー〜〜〜〜〜!!!!」

しとしとと物憂げに降る雨の中で、悠里は元気よく絶叫したのだった。

 

 

6月なので梅雨、だから傘。そんな単純な思いつきです(笑)。
キヨは天邪鬼なのでこんな感じかな〜、なんて考えながら書いたのですが
けっこう気に入ってます。だけどキヨの傘って何色だろ・・・・・・気になる・・・・・・。