「 最強コスプレ 」
人気のない廊下の端で、一は精根尽き果てたような溜息を吐いてもう一度、目の前の相手の顔を見た。
「だから。やめとけって。先生晒しモンにする気かよ?」
「Why?ナゼだ?いくら年上と言っても担任はまだ20代前半、十分若い部類に入るだろう。そもそも人手が足らんと言えば断るとも思えん」
「そーいうのは弱みに付け込むっつーの。とにかくそれはやめとけ、それは」
ビシリ、と突き付けた指の先には艶やかなベルベットの光沢感溢れる黒いスカート、翻る華やかなレースに彩られた眩しくも白いエプロン。
それはずばり、世間一般で言うところの
「メイド服」
という代物だった。
確かにB6がメインに立ってやっているだけのことはあり、ClassXの喫茶店は裏も表も人手が足りない。
だが彼女に裏方を任せるのは人として何か大事なものを悪魔に売り渡すような気がしたし、かといっていつものスーツ姿で
フロアへ接客に出てもらうのも文化祭の雰囲気には馴染まない。
そんな閉塞した状況を打破すべく翼が最後の切り札とばかりに満を持して出してきたのが、よりにもよってメイド服。
はっきり言って彼らの担任は、クラスのためなら女は度胸!とばかりに着るだろう。それがわかっているだけに、一としてはどうにも顔が渋くなる。
そんな彼をどう思ったものか、翼は大げさな溜息を一つ吐き、仕方がないとでも言いたげにやれやれと頭を振った。
「All right、わかった一。ならばこれでどうだ?―――――永田!!」
「はい、翼様」
パチンッと鳴らされた指を合図に後ろに控えていたスーツ姿の永田さんが抱えていた丈の長いビニールを恭しく捧げ持ち、バサリと広げる。
途端にファサッと広がった黒サテンのシフォンスカート―――――と、その波間に見え隠れする長い茶トラのしっぽ。
吊るされたハンガーのヘッドに掛けられたのは白いレース地のヘッドドレス―――――と、ピンと立った愛くるしい茶トラのネコ耳。
「これならば文句はあるまい?」
これはもはや紛う方なき、メイド服―――ネコ耳バージョン。(←ここ重要)
「ばッ………ちげーよ!誰がそんなこと言った!!」
「なんだと?オマエ的に今いち『萌え』が足らんのではないのか?だからこそこうしてメイド服にネコ耳としっぽを付けて」
「つけなくていい!!つけなくていいからっ!!!」
「しかし草薙様・・・・・・南先生ならばお似合いになると思いま」
「思わなくていいから!!!つーか永田さん、犯人あんたかよ!!??」
予想外の伏兵にさすがの一も度肝を抜かれた。
もっとも当の本人はいつもと同じく真面目な顔で、
「南先生ならばやはりウサ耳でもイヌ耳でもなく、断然ネコ耳だろうと思いましたので。
何か間違っておりましたでしょうか?」
なんて言う始末。
思わず想像してしまう。
猫っ毛なのだと気にしていたサラサラのやわらかい髪から生えるネコ耳。
いつもならばお堅いスーツを纏った体はクラシックながらもふんわりとした愛らしいメイド服に
包まれて、スカートの陰では気まぐれにゆらゆらと長いしっぽが揺れている。そんな先生の口からとどめの一言。
『おかえりなさいませ。ご主人さま』
「・・・・・そりゃ、まあ・・・・・・間違ってねーとは思うけど・・・・・・・・・・・・・」
不埒な頭の中で繰り広げられた妄想にボッと顔が赤くなった。
間違っても『いい・・・』とは口に出来ないが、それでも先ほどまでの勢いがなくなった一に
翼は得意満面な笑みを浮かべて胸をそらす。
「さすがだな永田!」
「光栄です。翼様」
始まるまではなんだかんだとケチを付けていた翼の楽しそうな様子に、永田さんはニッコリと笑って優雅に腰を折った。
ずっと気になっていた翼ルートの先生メイドさん化計画(笑)
けれどハジメだけにただのメイドではなくてネコ耳メイドに!
実際ありますけど、なかなか皆さん元気でかわいくて良いですよ、ネコ耳メイド。
ちなみにこのネコ耳メイド服はハジメさんに強制プレゼントされましたvv
「しかし翼・・・永田さんて、かなりマニアックだな」
「さすがはオレの秘書、何事もPerfectだ!
永田の仕事ぶりに感謝しておけよ一!!
ハーッハッハッハッ!!!」
「いや・・・だから褒めてねーって」