遠くから見てもひと目でわかるほど、一君は目立つ。

 

(…あ…。一君だ)

 

昼食を食べ終えてClassXでの授業のために教室へ向かう途中、ぶすくれた顔をして鳳先生と向かい合っていた一君を見つけた。 

がっちりとした肩、引き締まった腰、スラリと伸びたしなやかな手足。
けっしてモデルのように繊細な造形を有しているわけではないけれど、それでも彼からは鍛えあげられたアスリートにも似た躍動的な魅力が溢れている。
その上まだ少年っぽさを残しつつも野性味のある整った顔立ち、加えて等身が高くバランスが良いのだから、むしろ目立たないわけがない。

 

(本人は『だからどーした』って感じだけどねー……あはは)

 

さすがに自覚はあるみたいだけれど、一君はそれを自慢だとは少しも思っていない。

あれはもったいないわよね〜、だってあんなにかっこいいのに!
それにけっこう優しいところもあるし、意識すれば女の子の理想の王子様だって
夢じゃないと思うんだけどなぁ・・・―――――なんて他愛もないことを考えながら歩いているうちに、遠くにいたはずの一君まであとほんの数メートル。

時折すれ違う生徒と挨拶を交わしたりしながら、それでも自然と向けてしまった視線の先で、ふと不機嫌な顔のまま鳳先生から顔を背けた一君が偶然にもこっちを向いた。

そうしてバッチリ、目が合ったその瞬間。

 

「あ!先生いいところに!」

「え!?あっ、は……〜〜〜〜〜っ!」

 

わたしは思いっきり、赤くなってしまった。


だって。だってだってだって。

 

ほんのさっきまで眉間に皺を寄せてなんだか思いっきり機嫌の悪そうな顔をしていたのに。

 

それなのに、あんな。

 

あんなふうにわたしを見て、途端にパッと向日葵みたいな笑顔をみせられたら、誰だって赤くなるわよ!

 

それなのに一君ときたらのこのことそばに来て、わたしが咄嗟に顔を背けた窓の方を同じように見上げたりしている。

 

「先生?なに急に外なんか見てんの?なんかやってた?」

「い……今、何かムササビのようなものが空を横切った気がして」

「何っ!?ムササビ!?どこどこ、どこだ!?」

 

………………しかも騙されちゃうし。

 

離れた所でこちらを見ていた鳳先生がやれやれと肩を竦めながら苦笑していたから、多分お小言から逃げ出すいい口実に使われちゃっただけなんだろう。

でも、一君がわたしを見てイヤな顔をせずに笑顔を向けてくれたことが嬉しくて、それでもいいかなんて不埒なことをわたしはちょっとだけ思ってしまった。

 

なんてことは一君にはぜったい秘密だけど。………ね?

 

 

 

 

 

「  Smile  」        

 

 

 

 

 

廊下の向こうに見つけたハジメがこちらを見た時の笑顔にトキメク先生。
まだ心を開きかけ始めた初夏頃の話。

ぜったいシッポとかあったら振ってると思います(笑)