安らかな寝息をたてて眠る愛らしい子羊が一匹。

「すー…すー…」

「むっふっふっ……イッツァキュート!子猫ちゃん…!あんまりかわいいから、狼さんは我慢の限界だよ――ってことで、いったどぅわっきむぅわ〜す♪」

その子羊を見つけた狼はヨダレを垂らさんばかりに鼻息を荒くして、今にも突き出した唇をくっつけようと目の色を変えたその瞬間。

 

スパァンッ!

 

――――――と、小気味いい音がオールバックに撫で付けられた茶髪の脳天に炸裂した。

「うぁイッテ!!誰だコラァ!?」

地色が深紅という派手な縦縞の背広を着て怒鳴る様はほとんど新宿のホストである。
けれどそんな彼の叫びも空しく、背後に姿を現したのは、

「誰だコラ、じゃあないだろう葛城先生。自分のしようとしていたことを棚に上げて」

煮らても焼かれても文句を言えるはずもない家主・鳳晃司様、その人だった。

「んなっ、鳳先生ッ!?お、おおおオレはぁ別に……っ」

「別に、じゃねぇじゃん。葛城先生が南先生にムリヤリ襲いかかろうとしてるの、オレ見たぜ」

「――――――だ、そうだよ?」

いつの間にやってきたのか、相変わらずスイヨスイヨとかわいらしく居眠りをしている悠里の傍らに立って、彼女の教え子である草薙一が葛城に冷たい一瞥を投げつけている。

「げげッ、草薙!」

誰もいないことは確認したのになんでっ!?とでも言いたげな顔に見てなかったら何をした気だとこのヤロウ、と自然一の視線にも力が入る。
だがそれは助け舟を出してくれた鳳も同様の心境だったらしく、

「まったく……。いい加減反省ってものをしようね、か・つ・ら・ぎ・先・生!」
「いぃぃだぁああ〜〜〜!いだいいだいいだい、鳳様ッ!みみ、耳を引っ張らないでぇー!!」
「聞く耳持たん!」
「ヒイィー!おたすけ〜〜〜……!」

いよいよ進退窮まって青くなったホストの耳を、彼の家主は微塵の情けも容赦もなく掴んで、職員室ではないどこかへと引きずっていった。
毎度のことだが一体どこに連れて行かれてるんだろうとちょっと不思議に思わないこともない。

「はぁ〜…っとに油断も隙もあったもんじゃないな、この職員室……」

ようやく訪れた平穏に、一はいまだ夢の中にいる担任を見やって苦笑する。
けど、先生もあんだけ騒いでんのにまだ起きないってどうなんだよ………と思わないでもないわけで。

 

「あーもう、オレが卒業したら心配でしょうがねぇじゃん。これじゃ」

少し先の未来を思い描いて、来客用トイレのスリッパを片手に一はちょっとだけ頭を抱えたのだった。

 

 

 

 

                                                   『  鉄壁のディフェンス  』

 

 

 

銀児の暴挙にタッグを組むハジメ&鳳先生。
ハジメはゲーム中、嫉妬系のイベントが少なかったのがちょっと残念だったので
勝手に補完してみました。でも多分鳳先生とVSはない気がする・・・(笑)