「 ハロウィンの夜は貴女好みに 」

 

 

 

バックヤードにお客様から貰ったプレゼントを置きに戻っていた万里は、ロッカーを 開けたり閉めたりと不審な動きをしていたカズマに目を丸くする。

「あれ、カズマ。なにしてんの、探し物?」

「万里さん……、ええ。さっきうっかり掛けていた眼鏡を、ドレッサーのところに 置きっぱなしにしてフロアに出てしまったので」

しかし、ないのだ。たしかに先ほど外して、ここに置いたはずなのに。

「でも度入りでしょ?間違って掛けてっちゃう奴はいないだろうし…… あ、お客さんの誰かが持ってっちゃったとか」

「いやそれはないでしょう。炎樹さんのじゃあるまいし」

「あはは〜、だよねぇ。んー、だとすると………カズマ、頭の上に掛けて忘れてたりしない?」

「………………万里さん?」

クルリと振り返った笑顔が怖い。

「……うっわー、カズマってば笑ってるのに青筋立てないで、背筋凍るから」

「だったらくだらない冗談はやめてください。いつの時代ですか、それ」

「刺さるなぁ、今の。いいよいいよ、どうせオレはオジサンですよー」

拗ねるフリをして笑いながら、けれど万里はひょいひょいと物を除けてはあちこち覗き込んで眼鏡を探していた。
こういうところがやはり大人で、面倒見がいいとカズマは思わず苦笑する。
その時、シャッとバックヤードのカーテンが開いてヨロリとチヒロが入ってきた。 どうかしたのか、と2人が揃って視線を向けた先には。

「――――……あのさー、チヒロ?その眼鏡って、どこにあったヤツ?」

こめかみの辺りを押さえてゆらゆらと揺れながら、いつもより幾分弱々しい声で彼は答えた。

「え……と、そこの………鏡台……、に…。けど、クラクラして………」

そこまで聞いて、カズマは盛大な溜息をついた。

「当たり前だ。かなり度が強いんだ、早く外せ。目が悪くなるぞ」

「……もしかして、カズマ、さん……の?」

「ああ。しかしなんだって度入りだとわかってて掛けてったんだ?仮装なら他にも何かしら―――」

あるだろう、と言い掛けたカズマだったが、ちょいちょいと万里に肩を叩かれる。

「聞かない方がいいよー、それ」

「は?」

けれど万里の忠告も空しく、チヒロはうっすらと頬を染めて節目がちに微笑んだ。

 

「明里さんが、こないだ……おれ、眼鏡掛けたら似合うって。………だから」

 

 

「――――――――な?」

「……………ご忠告、ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

こちらはハロウィンの時期に上げた拍手お礼SS。
チヒロの眼鏡仮装の真相は絶対こんなオチに(←オチなのか!)
ちがいない!!・・・と初めから決め付けていました(笑)