◆ 熱病 ◇
行灯の薄暗い灯りの中、己の腹の上に跨って白い体が揺れていた。
「あっ…、あぁんっ、ああ……!」
ほどけた黒髪を跳ね上げて淫らな声をあげながら、女は自らその細腰を動かす。
「あん、は……ひぃっ、あん、あぁん……ッ」
若駒の如くしなやかで張りのある乳房。 触れれば餅のように柔らかなそれが、律動につられて弾む様を見つめた。
いつも隙なくきっちりと着込まれた着物の下には、同じものが隠されているのだろうかと、不意に思う。
細く頼りない腕が硬い筋肉に覆われた胸板を押し、はんなりとなよやかな腰がもどかしげに寄せられた。
そうして向けられる先ほどまでは積極的だったはずの新八を訝る視線を誤魔化すように、されるがままに横たわっていた身を起こし、半ば強引に体勢を入れ替える。
薄い床に押さえ付けるように組み敷いた女の乳房を鷲掴んで、新八は猛った自身を女の奥へ深々と突き入れた。
「は…、あああんッ!ええ、ええわぁ……!」
下側にだけ紅を引いた赤い唇から悩ましい吐息が零れる。
惹かれるようにその首筋に顔を埋め、汗ばんだ白い肌を吸い、少し下がってあの柔らかな乳房へざらついた舌を
這わせた途端、最奥を突かれる悦楽と相まって女は細い体を捩って身悶えた。
「ああん!いやぁ……もう、もうかんにん……堪忍してぇ……!」
すすり泣くような嬌声のせいだろうか。
それともその一瞬、抱き込んだ華奢なその身を別の誰かと重ねたせいだろうか。
見誤った面影に、秘裂を穿っていたものがその質量を増した。
すると火が点いたように突き上げる腰も勢いが増し、女はあまりの激しさに許しを請う。
「堪忍しておくれやす……っ、ぅん……あっ、ああんっ、あああああ……!!」
そうして女が絶頂を迎えた少しあとに新八も昇りつめ、果てた。
詰めていた息をゆっくりと吐き出して、ようやく心に平静が戻る。
「………お客はん、えろう寡黙なお人やねぇ」
静まり返った部屋の中で、床に身を投げ出したままの女がふと呟いた。
その姿をちらりと見やり新八は笑おうとして、けれどできずに視線を逸らす。
「いつもは、そんなことねぇんだけどな」
素直に伸びた長い黒髪と、乱れたその間から覗く雪のように白い肌。
いまだ成熟しきらない少女の姿に、抱くんじゃなかったと後悔する。
わざわざいつもの島原を離れ、祇園にまで足を伸ばして買ったのは、まだ新造を揚がって間もない娘盛りの娼妓だった。
新八の好みはもっと肉付きがよくて艶のある、どちらかといえば女盛りを迎えた頃合の女なのだ。
それなのにどうして今日に限って、こんな少女を買ったのか。
時折頭をちらつく千鶴の顔を必死で振り払いながら、新八は深い溜息を吐いた。何馬鹿なこと考えてんだ、と心の内で己を殴る。
千鶴ちゃんは素直で健気で可愛いが、綱道さんからの預かりものだ。
慕われる心地良さに妹がいたらこんな感じだろうかと甘やかな感情を抱くことはあっても、
女を感じたことは一度もない。
それでも、行為の最中に眼下の相手が千鶴だったらと―――――そう思ったことも事実で。
「……悪いな。もう帰るわ」
「あ……まだ時間が……」
女の姿を見ると否応なしに現実を突きつけられた。
男装のためにいつもきちんと着付けた袴を脱がせて帯を解いたら、その下の素肌は
あの女と同じように白く柔らかいのかと、想像する。
手に、舌に、触れられればどんな反応をするのかと思いを巡らせてしまう。
「いいって、払っとくから休んどきな」
「へぇ、おおきに」
これ以上は考えるまい、と。
幾分不機嫌そうな声でそう言い置き、新八は少し多めに花代を払って、乱れた着物を手早く整えると部屋を出た。
しばらく女は抱けそうにないと、そう思いながら。
新八といえば花街。
そんな妙な固定観念のせいか(…すみません…)
こんな話を思いついてしまいました。
だから新八っつぁんは攻略対象じゃないんだってば……!
本編ではいくらかわいがられても絶対妹分的な意味でしかないので
妄想でならこれくらいいいかな、と(笑)