◆ 一目瞭然 ◇
「原田さん、いらっしゃいますか?」
開け放たれた障子の陰からそっと顔を覗かせた千鶴は、失礼しますとことわって部屋に入る。
「これ、お洗濯が終わった稽古着です」
きちんと畳まれた筒袖の稽古着に、つい申し訳ない気持ちになったのだろう。
「そんなことありません。父様を探す以外のことでお役に立てることは少ないですし、このくらいはやらないと」
礼を言いながら清潔になった稽古着を手に微笑まれ、自然と頬が赤くなる。 ふと半年近くも前の出来事を思い出して、千鶴は不思議そうに胡坐を掻いて自分の正面に座っている左之助を見た。
「そういえば、原田さんは最初から私が女だってわかってたんですよね?」
至極あっさりと肯定されて、一応それなりに自信のあった千鶴はちょっとだけへこむ。
「うー………どこで判ったんですか?」
少しだけ悔しそうな表情をしていたかと思うと、正座のままズイと身を乗り出してそう尋ねた。
「見た目、仕草、声の感じ……」
指折り挙げられる原因はどれも一朝一夕に直せるものではなく、千鶴はがっくりとうなだれた。
「原田さん………それ、全部ですか」
つられて垂れた一つ括りの黒髪から雪のように白い首筋が覗き、それを見た左之助は内心でこっそりと苦笑する。
「おう、全部だ。けど―――そうだな、やっぱりどれってんじゃなしに、まぁ全体的にやわらかいっつーか」
あの二人のように敏い人間が平隊士の中にそう何人もいるとは思えないのだが、千鶴は万が一のことを心配しているのだろう。
「とりあえず、これからはさっきみたいのはなしでお願いします」
思えば初めからなのだが、新選組内では男装をし少年として過ごしている千鶴を、左之助はことあるごとに女の子扱いした。
「さっきみたいの?」
自分で言うのもおこがましいのは百も承知ですが、などと口の中でもごもご呟きながら
「そりゃあ無理だ」
なんとなく拗ねたその口ぶりに、左之助はわざとらしくニヤリと笑ってみせた。
「俺は嘘が吐けないからさ」
旦那にするなら絶っっっ対、左之助!!!……と思いました。新八もいいけど。
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