「総司、てめぇいい加減にしろっ!!」
「あーもう。はいはいわかりましたってば、今やりますよまったく。おじさんはこれだから……」いつものように適当にあしらった沖田が最後にボソリと付け加えた一言に、気苦労の耐えない眉間をマッサージしながら書類に戻ろうとした土方が反応した。
「―――おいコラちょっと待て。誰がおじさんだ」
「誰って土方さんですよ。僕より九つも上なんだし」あははと笑いながらなんでもないことのようにそう言って、沖田は唐突にお茶を運ぶ途中だった千鶴に矛先を向けた。
「ねえ。千鶴ちゃんもそう思うよね」
「……え、は?なんですか??」まったくもって話が見えなかったが、淹れてしまったお茶は冷める前に運んでしまおうと一言「失礼します」と声を掛けて千鶴は土方の机に湯呑みを置いた。
そこに話を続けている沖田の声が飛んでくる。「三十路の独身男なんておじさんだと思うでしょ?」
「………………み、三十路で独身、ですか………………?」沖田の言った条件にバッチリ該当する人物はいる。 今、千鶴の目の前にいる土方だ。
「ねえ?まだ18歳の千鶴ちゃんから見たら、おじさんだよね?」
「え、っとえーっと……そ、そんなことないですよ?」突然のことで答えに詰まってしまったけれど、どうにか土方に向かってそう言うと、
「………そりゃあどうも」
悪いのは千鶴ではないがなんとなく疎外感もあり、なんだか不機嫌そうな傷ついたような微妙な顔をして、土方は今し方千鶴から出されたばかりのお茶を飲んだ。
それを余所にそれまでパソコンに集中していたらしい平助が、顔を上げて話に混じってくる。「つーか千鶴、その条件で思い浮かべるの土方さんなんじゃん!」
「えっ!?……あっ、べ、別に、だって……いいでしょう、土方さんが30代で独身なのは事実なんですから!」三十路で独身=おじさん、とは単に沖田の言だ。
常識的に考えて千鶴の連想は普通である。混ぜて考えるから変なことになるだけだ。
むしろ土方ほどの美男子で収入も立場もある三十路の独身男性ならば、独身貴族ともてはやされることはあっても、おじさんと言われることはまずないだろう。「じゃあ、千鶴ちゃんは何歳くらいまでならいいんだよ?」
面白そうに事の成り行きを窺っていた永倉の問いに、千鶴は目を丸くする。
「いいって……何がですか?」
「んなの決まってんじゃねーか。彼氏だよ、彼氏。幾つまでなら付き合えんの?」
「はぁ、彼……えっ、ええ!?彼氏ですか!?」っていうか、何でいつの間にか自分の許容範囲の話になっているんですか!?
「あ。それはオレも気になる!やっぱ同年代だよな?」
「そうだよね、その方が話も合うし」
「バッカ平助!そんなもん大人の男の魅力に敵うかよ。オレらでも大丈夫だよな!!」
「そうそう。それなりに人生経験も積んでるし、千鶴も安心して甘えられるだろ」
「いや、それなら土方さんも負けていないはずです。精神的にも肉体的にも充実した三十路男性ならではの包容力は、少々の年齢差などものともしない。そうだろう雪村君?」
「や、山崎さんまで……!」しかも何故だか必死の土方プッシュだ。
いつの間にやら原田や山崎まで参戦して、収集のつかなくなった話の成り行きに千鶴がオロオロと困り果てた時、ガタンとすぐそばの土方が勢いよく椅子から立ち上がった。
「いい加減黙りやがれ!!!」
伝家の宝刀、落雷の如き大音声での一喝は、終わりかと思いきや息継ぎをした後もまだ続く。
「いつまでもペチャクチャうるせぇんだよ、ンなことしてる暇があんならとっとと仕事しろ!!
総司はアポイント先の書類確認、平助は報告書、永倉は月締めのレポート、原田は得意先回り、てめぇらやることは山ほどあるだろうが!!」シーンと水を打ったように静まり返った場を睥睨して嘆息し、怒鳴って乾いたのどを潤すように湯呑みに残っていた茶を一気に煽る。
「……千鶴、悪いがもう一杯持ってきてくれ」
「あ、はい。ただいま!」
そうして傍らに立っていた千鶴の手にした盆に、空の湯呑みをコトンと置いた顔は相変わらずの無愛想さだ。
これはすぐに淹れてこなくてはと踵を返した千鶴に、こちらも相変わらず空気を読まない沖田が尋ねた。
「―――で、千鶴ちゃんは結局何歳までなら恋人にできるの?」
「総司!!!てめぇいい加減にしろッッ!!!!」
とりあえず自分のことではなく副長プッシュに魂を燃やす山崎君に愛。(笑)
私は左之助大好きなのにどうしてこう、微妙に土方さんに傾いてしまうのでしょうか……。
最近、自分の心に疑問を抱かずにはいられません。
実は左之ではなく土方さんLOVEなの、私!?