◇◆ モ テ モ テ の 真 実 − a f t e r − ◆◇◆
かくまっていた琉夏が教室から逃げていってしまい、透子は今度こそ帰ろうと教室を出た。
放課後の喧騒に包まれながら階段へ向かうと、廊下の向こうからやってきた体格のいい幼馴染を見つけて、透子は目を瞬かせる。
「コウくん」
「あ?おう、オマエか。どした、目ぇ丸くして」
「ううん、今度はコウくんだと思って」
弟の次は兄。ゆくゆく自分はこの兄弟に縁があるのだろう。そんなことを思ってつい口にすると、今度は琥一が目を丸くした。
「なんだそりゃ?」
「なんでもない。帰るでしょ?」
「ああ、行くべぇ」
並んで階段を降り、靴を履き替えて昇降口で合流する。
いつもならばここに琉夏もいるのだが、先ほどの様子からして今日は一足先に帰ってしまったかもしれない。
「コウくん今日バイトないよね?お茶してこっか?」
時間があるなら少しおしゃべりに付き合って欲しいと思って透子が誘うと、琥一はポケットに手をツッコんで、途端にその眉間にシワを寄せた。
「………ワリィ。金がねぇ」
「そっか。じゃあいいよ。帰ろ?」
「………おう」
返事をした琥一がどこか苦虫を噛み潰したような不機嫌顔をするものだから、下校の途についていた他の生徒達がすれ違うたびにギョッとして道を空ける。
隣を歩いている透子がさすがに見かねて苦笑した。
「もう、顔怖いよ」
「悪かったな。生まれつきだ」
たしかに、昔から目付きはあまりよくなかったかもしれない。妙に迫力があるのは、グレてからの副産物だろう。
琉夏も同じものを持っているけれど、琥一と違って普段は隠しているから気付かれないだけだ。
そんなことを思って、透子はふと先ほどの顛末を話して聞かせた。
「―――――で、2階から飛び降りて逃げちゃった」
「アイツはまた……ガッコで目立つことすんなっつってんのによ」
「コウくんは?」
「あ?」
問われた意味がわからなかったのか、琥一が怪訝そうに透子を見る。
「だから、彼女。コウくんはいないの?」
「ハァ?いるわけねぇだろ、オレに」
「そうかなぁ。ちょっと怖いかもしれないけど、カッコイイからモテそうなのに」
透子の言葉に思わず絶句した琥一は、次の瞬間、ガラにもなく赤面して自分を見上げていた幼馴染から即座に顔を背けた。
「〜〜〜ばッ、馬鹿か。モテねぇよ」
「うそ。モテるんでしょ?」
「だから、モテねぇ。おら、いつまでもバカなこと言ってんな。帰んぞ」
「わっ!髪グシャグシャにしないでったら!」
手を引く代わりに頭を撫でればそんな文句を口にされ、笑って憎まれ口を返しながら2人は家路を辿っていく。
けれど海岸沿いの道は、沈む夕陽に照らされてすべてが太陽の色に染まり、透子は照れた琥一の赤い頬には最後まで気付かなかった。
前回の琉夏の続き、ということで兄貴の事情を書いてみました。
琥一くんは琉夏と違ってバンビのことを最初からそういう対象としては見てないんだろうな、と毎回思います。
でもやっぱりなんとなく他の子たちとは一線を画しているので、ある意味ではやはり最初から特別ではあるというか。
なんだろう・・・・・・・思春期だ(笑)