◇◆ わ た し の 王 子 様 ◆◇◆
それはいつもとおんなじ放課後。
向かい側に座った2人は口を揃えてこう言った。
「で、オマエは?」
アイスティーを飲む振りをして、透子はしばらく考えた。
「………ええと、」
「あ、ナイショってのはなしね」
何か言いかけたところで、メロンソーダを飲んでいた琉夏に先手を打たれる。
開いた口を閉じて再びストローに口を付けた透子はもう一度考えた。
「そんな考えるようなことかよ?」
琥一の呆れた声に顔を上げると、透子はムッとしたように唇を尖らせる。
「だって、改めて聞かれることなんてないもん」
「まーいいじゃん。では改めて、透子ちゃんの好きな男子のタイプは?」
「もう……っていうか、2人ともそんなに聞きたいの?」
すると琉夏は真顔で、琥一はわずかに視線を逸らしつつ頷いた。
「うん。スゲェ知りたい」
「……まぁ、興味はあるな」
「そうなの?」
この2人がそういうものに興味があるなんて、なんとなく意外だと思いつつ、透子はつい素直にそれを口にする。
「意外。2人ともバイクと食べ物以外に興味あったんだ。あ、コウくんはヴィンテージもか」
「あのな。ケンカ売ってんのか?」
「透子ちゃん、ひどい」
「ゴメンゴメン、だってコウくんも琉夏くんもそういうの興味なさそうなんだもん」
笑いながら謝ると、琥一も琉夏も微妙な顔をして互いにチラリと視線を交わした。
別に興味がないわけではないが、口にすればそれは単なる好みのタイプではなくて好きな女子になってしまう。
しかも兄弟揃って相手が目の前の幼馴染では尚更正直に言えるはずもない。
そんな2人のジレンマなど露ほども気づかない少女は残り少なくなったアイスティーで喉を潤して「そうだなぁ」と思案げに呟いた。
「背は高くて、」
「うんうん、それから?」
「頼りになって、」
「まぁ、オマエ危なっかしいからな」
茶々を入れてくる兄弟をなんとなくからかってみたくなって、わざとらしくにっこり笑う。
「……余計なこと言わない人かな?」
「あ。コウ、アウトだ」
「んだと?おい透子」
途端に両極端な反応を見せた二人があまりにも予想通りで、透子は小さく噴き出した。
「あはは、ウソ。ずーっとわたしを守ってくれる人がいいな」
「それ俺じゃん。聞いたかコウ、透子ちゃん俺が好きだって!」
「馬鹿、テメェだけだと思うなよ?今の条件なら俺だってセーフだろが」
ありきたりなセリフだと我ながら思ったけれど、琉夏は大喜びで隣に座る琥一へ得意げに胸を張り、琥一もアイスコーヒーを飲みながら弟と張り合う気満々だ。
しかしだ、あくまで透子が言ったのは【好きな男子のタイプ】であって【好きな男子】ではない。
「いやいや、ちょっと。あくまでただのタイプだから、ね?」
「わかってるわかってる」
「おう、わかってるぞ」
そう言いながら揃ってこちらを見る2人はたしかに笑顔だが、いかんせんお互いに目が笑っていない。
一瞬通りかかったウェイトレスがギョッとして、早足に自分たちの席から遠ざかって行ったのは決して見間違いではないはずだ。
けれどそんなことにも気付かずに琥一と琉夏はなんだか見るのも恐ろしい笑顔で睨み合いを続けている。
「……もう」
好みのタイプなんて、もうずっと昔から変わっていないのに、当の本人達はこれっぽっちも気がつかない。
それがなんだか癪に障る気がして、相変わらずな兄弟を眺めながら透子は溜息交じりにアイスティーのストローをクルリと回した。
とりあえず兄弟王子なので(笑)
でも実際、物心つくころにあんなふうに扱われてたら当然なんじゃないかしら?と思ったりします。
ま、あくまでタイプなので好きになる人が必ずしもそうとは限らないのがミソですが。
タイトルは気に入ってるので、いつかオフに使いたいな。